防災無線スピーカーの騒音問題について

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現在、日本では、安全・安心の掛け声のもと、多くの自治体において防災無線スピーカーが濫用されており、少なくない数の人が騒音被害に苦しんでいます。「防災無線 うるさい」、「防災無線 騒音」などでウェブ検索すると、いわば官製騒音公害とでも言うべき状況が生み出されているのは明らかです。

幸い著者宅は防災無線がほとんど聞こえないのですが、生まれ故郷が毎日何回もスピーカーで長々と放送をするところで、放送塔のそばの家に遊びに行くと音波で建物がビリビリ震えていました。会話もできなくなり、友人が顔を歪めながら黙ってスピーカーの方向を指さしていたのが印象に残っています。別件でスピーカーの騒音被害に遭っていたこともあり、苦しんでいる方々の気持ちはよく分かります。外出先で不意に辺り一帯に響き渡る大音量の音楽を聞くたびに、どうしてこんなことが許されるのかと眉をひそめています。

これに関して、まとまった形ではないのですが、ひとまず思うところを書いておきます。

結論を簡単に箇条書きします。

防災無線をどう運用するか

前提となる考え方について

結局のところ、自分の身は自分で守るしかないのではないかと思います。非常袋を用意して、定期的に中身を点検していますか? 避難所の場所は知っていますか? ハザードマップ等を確認していますか? 地域や身内でお互いに災害情報を連絡したり、助け合える心構えはできていますか?

滋賀県草津市の屋外スピーカーによる騒音公害のサイトより写真を引用します。

この写真を見れば、余程の正当かつ緊急の理由がない限り、屋外スピーカーを鳴らしてはいけないということは明白だと思います。防災無線は災害被害を抑制するためのものですが、目の前の屋外スピーカーから大音量の音を毎日聞かされる住民にとっては、スピーカーの騒音そのものが現実の災害です。

定刻の音楽、防犯放送、地域の催し等のお知らせ、すべて論外です。

屋外スピーカーの限界

なぜ防災無線の騒音問題がこじれるのか、勘所とでも言うべきポイントを指摘したいと思います。

騒音苦情が絶えないにも関わらず、防災無線の濫用が改められないのは、屋外スピーカーが防災のために絶対的に有効かつ必要なものだと見なされているからです。神聖不可侵というと言いすぎかもしれませんが、防災無線を推進する行政担当者や、騒音被害を感じていない住民には、防災無線を少しでも批判するのはとんでもないというような頑なな態度を示される方が多いです。

防災無線=スピーカーの騒音 うるさい人いますか??????????? - Yahoo!知恵袋

そりゃうるさい筈です。うるさくしているのですから。逆にうるさくなかったら目的を達しません、もっと音量を大きくしろ、と思います。私はうるさいと感じる時がありますが、もっとボリュームを下げろとか、無くなれば良いと思った事は一度もありません。イヤ、そもそも騒音と決めつけるところに通常な社会生活を営めない異常なものを感じるのは私だけでしょうか。

が、実のところ、屋外スピーカーは、考えられているほどには防災上の実効性は高くありません。NHKクローズアップ現代で、「避難の情報が伝わらない」という報道がありました。Twitterの発言から引用します。

NHKクローズアップ現代「避難の情報が伝わらない 検証 台風12・15号」(2011-10-13)出演者によるまとめ - Togetterまとめ

  • スピーカー型(?)の防災行政無線も激しい風雨の音、近年の住宅の防音化で聞こえにくくなっていますね。 最後は自分で危険を判断する力を身につけないと行けないのでしょうか?
  • #NHK クロ現。女性「スピーカーの音、まったく聞こえない」NHKアンケート。130人中、スピーカーの音が聞き取れたという回答はなし。広報車も効果を発揮できず。呼びかけが認識できたのは、道沿いの3割。気づかないか、気づいても情報が聞き取れない人がほとんど。
  • 情報伝達の課題は今後に活かしたいが、いずれにせよ受け手のリテラシーも試される。一人一人が本気で自分を守る気持ちにならなければいかなる対策も水泡に帰す。
  • 避難を呼びかける情報を知ったのは|エリアメール:27%、広報車:21%、友人知人:18% #nhk
  • 本日のNHKクローズアップ現代「避難情報が伝わらない」を今録画で拝見。長年私が言い続けたことがほとんど出ている。防災無線のスピーカは雨音で聞こえない。(…)
  • 屋外にいる人は別として、耐震、防音性能が格段に向上した増えつつある新しい家に向けては、スピーカーは無能でしょうね。新築した人に聞くところ、雨の音すら聞こえてこないそうですから。防災無線よりもメール的情報端末の配布、設置に有用性を感じました
  • 防災無線や広報車には「サイレン」の機能を果たしてもらって,なにかったなと思った人がメールやwebを確認してもらう,という方向かなと思います.webが落ちてしまえばどうしようもありませんが.
  • (…)市町村からの情報をスピーカーで告知するよ! って体制がもう限界に来てるんじゃないだろうかということは思う。特にニュータウンなんかでは。 そうなるとエリアメールとかになってくるんだろうなぁと。 結構希望は持てそう。

台風や大雨のときに無力であるというだけではなく、耳の遠い高齢者や、防音性の高い住宅が増えているということもありますし、もちろん遠方では聞こえないという問題もあります。屋外スピーカーはそもそも不完全な情報伝達手段であり、広く災害情報を伝えることはできないのです。まして現在では強制的に鳴る携帯電話のエリアメールや、他にもSNS、メールサービス、ウェブサイトといったさまざまな補助手段があります。もちろん既存のテレビやラジオ、地域の連絡網も有効です。この点を理解すれば、騒音被害を訴える人々や、防災無線そのものについて、もう少し柔軟な考え方ができるのではないでしょうか。

しばしば、「防災無線が何を言っているのか分からないから聞こえるようにして欲しい」と言う方がいます。が、それは間違いで、「他のもっと良い伝達手段はないのか」「他に災害情報を知る方法はないのか」と考えるべきなのです。全家庭、すべての人に屋外から音声を届けることは不可能です。できないことを無理にしようとすれば弊害が発生します。現に、スピーカーのそばで苦しんでいる住民の方々がいるように。

ただ、番組中でも指摘されていますが、不完全だからといって、屋外スピーカーが必要ないというわけではありません。あくまで様々な伝達手段の一つだということです。

避難の情報が伝わらない - NHKクローズアップ現代

(名古屋市守山区下志段味地区のケース、避難勧告が伝わった手段で)まず一番多かったのはエリアメールです。エリアメールの利用者、エリアメールを使って認知したという人が意外に多かったというのが、目につきますね。それともう一つは、いくつもの情報が配給され、いろんな手段で情報を得たということが分かります。これは基本的な話なんですけれども、情報伝達を確実にするには、少しでも多くの手段で、伝える手段を用意しておくということが、大変重要になってきます。例えばもうメールを用意したから防災無線はいらないというような話ではなく、いろんな手段で用意しておけば、例えばどれかが切れても、どれかが生き残るかもしれない、そういうメリットがあるわけです。

ここでは大雨の例を取り上げましたが、他にも、絶対視されがちな防災無線放送が実際には災害被害をどれほど抑制できるのか、精査するべきケースは多いのではと思っています。

例えば、近頃では緊急地震速報を屋外スピーカーで放送するようになっていますが、地震波よりも速く音を届けなければならない、文字通り1秒を争う警報なのに、放送の開始に数秒から数十秒もかかるというようなナンセンスな状況にある自治体がほとんどのようです。防災無線の大掛かりな機器とスピーカー・アンプを瞬時に起動することは不可能ですし、仮にそれができたとしても、音は1秒間に340メートルしか進みませんので、屋外スピーカーの警報音は手元のテレビや携帯電話よりも耳に届くまでに物理的に遅延することは避けられません。防災無線を使う意味があるのでしょうか。また、ミサイルが落ちてくるからといって住民にどうしろというのでしょうか? そもそもミサイルを撃たれない、あるいは撃たせないようにするのが国防であり外交ではないですか? それに、すでに何度もミサイル発射やゲリラ攻撃の誤報事故が起きており、最早誰も信用しないのではないですか?

ここで言いたいのは、だから防災無線は役に立たないのだということではなく、防災無線はあまりにも万能扱いされ、奔放な運用がされているので、一度疑いを持って欲しいということです。とりわけ、このところの屋外スピーカーの運用は、どちらかと言えば実際に安全に貢献するというよりも、住民へのパフォーマンスという面が大きいように思えるのですが、いかがでしょう。

ちなみに、新宿区の防災無線のデジタル化工事契約に住民監査請求を出した方がいるようです。ただでさえ国や地方の財政が厳しい折に、防災無線システムの整備や改修に毎年多額の予算が費やされているのは適切か、住民の生命を守る上で効果的な税金の使い方かという議論は当然出てくることと思います。導入した設備がおかしな使い方をされているならなおさらです。自分が払った税金がただの毎日の騒音になって戻ってきていると認識されれば、怒る納税者も現れようというものではないでしょうか。

「定時放送は点検を兼ねており必要なものです」

行政担当者や、平時の防災無線放送を擁護する人からよく聞く定番の台詞です。これで納得してしまう人も多いでしょう。「なるほど、点検のためだったのか、それならしょうがない」と。が、少し考えてみれば不可解な点が多々あるのが分かります。

非常設備を定期点検する必要は確かにあります。が、毎日点検をする必要があるのでしょうか? それほどまでに信頼性の低い、故障しやすい設備が納入されているとすれば問題ではないですか?

具体的にどういう「点検」をしているのでしょうか? 点検というと、通常、システムが回路的に故障していないかチェックしたり、自治体職員が各地点で音声を聴取し、聞こえ具合を調べるようなことを指すかと思いますが、時報を鳴らすだけで点検になるのですか? スピーカーが故障して時報が鳴らなくなったのに、そのまま長く放置されたという事例を聞いたことがあります。住民からの通報もなかったそうです。誰も気にしないどころか、日々の騒音がなくなって快適になったとでも思っていたかもしれません。

また、点検のために音を鳴らすとしても、大音量で放送する必要はありません。たとえ正当な点検のためであっても、屋外スピーカーの放送は騒音被害を引き起こします。スピーカー近辺に住む人々の日常生活を犠牲にして、苦しめてまで、毎日、大音量で「点検」しなければならないのですか? 小音量で、あるいは週一回、月一回といった頻度の点検では駄目な理由は何でしょうか? また、音楽や防犯の文言を流している地域もありますが、「点検」のために、数十秒からときには1分以上にもおよぶ長時間の放送=騒音は必要ですか? せめて騒音を最小限に留めようという意識が少しでもありますか? 例えば、鐘の音が数回鳴るだけという自治体もあります。それではなぜ駄目なのですか?

こうした疑問に答えられない限り、「点検」は、スピーカーを鳴らしたいがため、現状の放送を維持したいがためのただの言い訳であり、騒音苦情を封じ込めるための口実としか考えられません。

点検をするのであれば、いざというときのためにも、「名ばかり点検」ではなくきちんとした点検をするべきだと考えます。ただスピーカーを鳴らすだけではなく、各地点で音声を聴取・調査し、はっきりと「これは点検放送です」「訓練放送です」というような放送をしたほうがいいのではないでしょうか。

新宿区職員措置請求監査結果(東京都新宿区)

イ 区は目的外使用であるとの批判をかわすためか、定時放送、見守り放送は防災行政無線の点検だと主張している。しかし、点検であるならば1日2回も放送を行う必要はない。年1回程度で十分である。また、区が本当に屋外スピーカの点検が必要であると考えているのであれば、他の無線局(地域系、移動系)の点検も同様の頻度で行う必要があるのに、このような事実はない。それは区が点検目的と考えていないことを示している。

ウ もし、点検目的であるならば屋外スピーカから騒音を出して点検を行うことは許されず、この点においても違法・不当である。都民の健康と安全を確保する環境に関する条例第130条によれば、公共のために使用する場合等を除いて「何人も、直接に屋外で騒音を発する状態で拡声機を使用してはならない。」と定めている。不必要な点検のために騒音を鳴らすことは「公共のために使用する場合」にはあたらないから、スピーカから騒音を出して点検することは許されない。

エ それに、点検をするならわざわざ騒音を出さなくとも、アンサーバックによる点検で十分である。また、音による点検が許されるとしても、音がどの地点に届いているかの情報到達調査が行われていなければ騒音を出して点検する意味はない。

オ 屋外スピーカから発せられる騒音は環境基準(環境省告示の「騒音に係る環境基準について」)をはるかに超える85dBである。緊急時の災害関連情報が環境基準を超えて放送されることはその性質上許されるとしても、日常の点検のための放送が環境基準を超えるのは許されない。

防災行政無線による官製騒音公害を正す(宮城県美里町)

町では時報放送は点検の為だと明言しています。緊急時にスムーズに情報伝達を行う為、どうしても日に3回時報を流さなければならないとの説明です。

この回答の中には、町民を欺こうとする町の欺瞞と傲慢さが如実に現れています。何ら技術的な根拠を示さずに、時報を流さなければ点検が出来ないと、そう町民を欺こうとしているのです。この説明に依って、うるさいと感じながらも、防災の為には仕方が無い、我慢しなければいけない。そう考える住民の方も大勢いらっしゃるかも知れません。

此処に欺瞞があります。時報を流す事は点検の一つの方法であって、それが全てではないのです。何故、全国の3分の2もの自治体が時報を流さずに運用しているのか、町はこの実態を調査し報告すべきです。

技術者は『スピーカーから音を出さずに、動作確認を行う方法が有る』と明確に答えています。但し音は流しませんから、親局において電気的に監視をする機能だとの事です。このような機能がある事を隠し、ひたすら時報を流さなければ点検が出来ないと主張する事は、事実の歪曲であり、隠蔽であり、住民に嘘をついている事に他なりません。

(…)

通常は上記の機能によって音を出さずに点検をし、音を出すのは最小限(月に1回等に)する方法を速やかに検討し運用の変更をするべきです。

毎日1回どころか、2回も3回も実際に稼働して点検しなければならない非常用機器が一体どこにあるというのでしょうか。

「子ども見守り放送」について

近年、「子ども見守り放送」のような防犯放送が各地に広まっているようです。毎日定刻に、児童が学校から安全に帰宅できるように見守ろうとアナウンスするものです。これは苦情が少ないということで、防災無線関係者の間で好評だそうです。点検のため、防犯のため、子どものためと、大義名分で幾重にもガードしているために、騒音被害に遭っている人が抗議しづらいのでしょう。

だからこそ問題があると言わざるを得ません。

繰り返しになりますが、屋外スピーカーの音声はいかなる放送であれ必ず騒音被害を生みます。苦情を押さえ込んだところで、現実の騒音被害はなくなりません。ある意味、子どもを盾にして騒音被害者の声を抑圧するようなことをしていては、かえって深刻な不信や反発を招くだけではないでしょうか。

2chに大阪府高槻市への投書を公開されている方がいました。

【官製騒音公害】防災無線スピーカーがうるさい

高槻市 危機管理課様

○○○と申します。

「子どもの見守り放送」ですが、毎日の放送がいささかならず煩わしく、また、行政の呼びかけとしてもおかしいのではと常々感じております。放送の見直しをご検討いただけないかとメールさせていただきました。

少々長くなりますが、意見としては主に3点です。

まず一点、放送の文言から「子どもたちを犯罪から守るため」というようなフレーズをなくしていただけないものでしょうか。スピーカーで毎日「犯罪」「犯罪」と繰り返され、犯罪について意識させられるのでは、まるでこの街・高槻市の治安がよほど悪いかのように感じられ、心が荒みます。また、保護対象である当の子どもたちの心身や育成にも決していい影響があるとは思えません。毎日、自分が犯罪の危険に脅かされていることを教えられて、子どもがのびのびと健全に育つでしょうか。

二点目、全市民に向けて、外に出て子どもを見守るよう呼びかけるのは、やりすぎではないでしょうか。子どもの安全を守る行為は尊いものと思いますが、それは市民の自由意志によって行うべきで、行政が指示することではないと思います。そもそも自らの生活や仕事がある人々が、一斉に外に出て子どもを保護するわけには参りません。多くの人が従わない、従うことができない呼びかけを毎日流すのは、むしろ子どもの守護に非協力的な人や、心理的に反発する人を増やす結果になるのではないかと懸念します。実際、埼玉のほうでは、こうした呼びかけがうるさいと児童への加害予告をする者が現れた本末転倒な事件があったかと思います。(管理人注:児童殺害予告で28歳男を逮捕=「防災無線うるさい」のことだと思われます)

三点目ですが、そもそもこうした毎日の定時放送が、防災無線の目的外使用であり、濫用なのではないでしょうか。環境省の発表では、拡声機の騒音に関する苦情がこのところ増加しており、特に前年度には27.7パーセントも増加しているそうです。そのような中、防災無線は行政自らが大音量を流すわけですから、よほど慎重な運用がなされるべきで、基本的には緊急時にしか使ってはならないものではないかと考えます。

なお、先の震災や津波のこともありますし、災害時に備えての設備の保守点検等を兼ねての放送であることは承知しております。また、実際にどのような犯罪が起きているのか、市の犯罪発生状況のページも拝見しました。こうした放送が犯罪者への警告になり、犯罪の予防になるのだとおっしゃられるかもしれません。その他いろいろなことを勘案しました上でも、音量、放送頻度、放送の長さ、放送内容、いずれも過剰なのではないかと苦言を申し上げたく思います。

街の看板であるJR高槻駅の周辺などでも、毎日ものすごい音量で見守り放送が鳴っておりますが、音環境や景観の面から、あまりにも無粋なのではないか、安全・安心に偏りすぎて他の大切なものを損なっているのではないかと感じております。とりわけ「子どもたちを犯罪から守るため」というフレーズは、まるで外来者に犯罪の多発をアピールしているかのように思えます。

以上、数年前に放送が始まった当初から考えていたことなのですが、一言申し上げたほうがよいのではと思いまして、一筆取らせていただきました。ささやかながら、一市民の意見としてご考慮いただけますれば幸いです。

時間がかかっても構いません。少なくとも一点目だけでも、できれば二点目も、ご再考願えればと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

ちょっとページが見当たらないのですが(また見つけたら追記します)、こうした「子ども見守り放送」の騒音で、寝ている子どもが起こされて困っているという行政への苦情を見たことがあります。どうも、当の子ども本人のことを思いやった放送ではないように思えます。

なお、治安が悪化しているから防犯放送は必要だ、という主張があるかもしれません。これについては、そもそも、本当に治安が悪化しているのかという疑問があります。「犯罪不安社会 誰もが『不審者』?」(浜井浩一、芹沢一也)という良書がありますのでご一読をおすすめします。

以下のような実例を見ても、防災無線放送がそもそも子どものためになどならないのは明らかです。

防災行政無線の騒音防止対策について

昨日、廿六木自治会役員会で、防災無線の騒音に悩まされている方の意見があり議論となりました。騒音被害の一方で、関連意見として、東西南北集落の端の家庭では逆に何を言っているのか聞き取れないという方が多くの意見がありました。

騒音に悩まされている方の大きな理由は「家族の中に乳幼児がいるため、幼児が熟睡していても、スピーカー音で飛び起き泣きじゃくる。それが一日数回、何日も続くと精神的にも不安定になり、お子様の成長に不安を感じているというものでした。」

ちなみにこのケース、議論になること自体が奇妙で、不要不急の放送で乳児を起こしてしまっていることが分かったのならば、すぐにでも放送=騒音を停止するか、音量を大幅に下げる以外の結論はないと思うのですが、いかがでしょう。他にも同じような家庭があることは容易に想像できます。「聞き取れない(から音量を上げて欲しい)」「放送を続けて欲しい」と言う方は、自分が「乳児を毎日叩き起こして構わない」と言っているも同然だということを理解しているのでしょうか。自分自身の手でよその家庭の寝ている子供を起こしてまわるような人はいないと思いますが、間に防災無線が入ってくると、なぜか途端にそれを良しとする人が増えるように思います。

話は簡単なのです。防災無線は、乳児も起こさなければならないような緊急時に使えばよいのです。

騒音被害者はどうすればいいのか

1. 自治体に意見しましょう

実のところ、自治体には、「スピーカーの音声が聞こえないから音量を上げて欲しい」「住民サービスとしてこんな放送を流してはどうか」というような困った要望が、高齢者や各種団体などからたくさん来るそうです。反対の主張をぶつけない限り、行政もこうした意見に流されてしまいます。特に、現に騒音に苦しんでいるなら、その旨をはっきりと直接アピールするべきだと思います。

防災無線を運用している部署だけではなく、ブレーキ役の環境・公害担当部署にも相談するといいのではないかと思います(これは立派な騒音公害なのですから。下の4で紹介している環境省の報告書も参照してください)。

また、一度放送が始まってしまうとなかなか改められないということがありますので、現在過剰な放送をしていない自治体にも予防的に意見しておく必要があるかもしれません。

2. 引っ越しましょう

足による投票」という言葉があります。屋外スピーカーを濫用しない地域に住んで、住民の生活環境を守ろうとしない自治体には税金を落とさないようにしましょう。これはある意味すでに広く行われていることで、若い世代が地方に住みたがらない理由の一つが生活に干渉してくる防災無線だという話もあります。

転居先の役所や不動産会社等に、防災無線スピーカーの詳しい設置場所と使用状況・放送記録を尋ねてもいいかもしれません。これにはふたつの効能があります。

実際、一見閑静な住宅街と信じて、知らずに屋外スピーカーの近くに引っ越してしまったり、家を建ててしまい後悔している人々がいるようです。不必要な防災無線放送は、単に静穏を乱すにとどまらず、住民の財産を毀損している可能性すらあるのではないでしょうか。

ひばり放送うるさい 防災無線で振り込め詐欺に気を付けましょう

静かな環境というのは、多くの人にとってお金を払ってでも手に入れたいものなんだ。財産なんだ。 だからこそ「閑静な高級住宅街」なんて言葉が使われるんだ。

その財産を市は破壊している。

「引っ越しましょう」と言いましたが、実のところ、これはとても難しい選択です。持ち家の人はもちろんのこと、賃貸であっても、生活基盤は簡単に移せるものではありません。誰にでも、通勤、通学、買い物、近所付き合いといった、そこに住んでいる理由があります。それも一家全員にです。自宅で騒音に苦しんでいる人に「引っ越せばいいじゃないか」と言うことはなかなかできません。それでもあえて取り上げたのは、防災無線の濫用は地域と住民に経済的な損害を及ぼしかねないこと、たとえすぐには影響が見えなくとも長期的に住民が逃げていきかねないことを説明したかったからです。

3. ネット上で騒音被害をアピールしましょう

自分の街の防災無線がうるさいし、引っ越すこともできない、行政も相手にしてくれないというのであれば、その事実をブログやウェブサイト等で告発してみませんか? すでに行っている方が多数いるようです。

被害状況や行政とのやり取りを公開するほか、YouTubeに、「○○市の防災無線の騒音」といったタイトルで放送の動画をアップロードするだけでもいいと思います。住むところを探している人にとって重要な参考情報になりますし、防災無線を濫用すると悪評が立つということが分かれば、行政も不必要なスピーカー放送を抑制するようになっていくのではないでしょうか。

4. 総務省・環境省に意見しましょう

防災無線システムは総務省の、騒音公害や拡声機騒音は環境省の管轄です。

なお、環境省の商業宣伝スピーカーの規制に関する報告書があるのですが、公共目的の拡声機放送についても触れており、非常に重要な考え方が示されていますので紹介します。行政に意見する際には、これをベースとすると良いと思います。

「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(環境省)

拡声機騒音問題においてはその音量や繰り返し回数といった面だけではなく、拡声機放送を行うことにより発生する音が音声や音楽などの意味のある音であることから、低い音量でも聞く人にとって不必要な場合等には、同じ音量の無意味音(工場騒音等)による騒音以上に問題となる場合もある。

(…)

(1) 拡声機放送を行う者の責務

拡声機放送に係る騒音に関する対策の考え方としては、まず第一に、何人も拡声機放送を行うことにより周辺の静穏を害することのないよう努めるべきであり、すべて拡声機放送を行う者及び拡声機放送を行わせる者には静穏を害さないよう努めるべき責務があるとの考え方を前提とする必要がある。

拡声機放送を行うことにより発生する害は、聞く側にとっては拒みようがなく、放送を行う者の一存により音環境が支配される。したがって、規制されるか否かにかかわらず、拡声機放送を行う側の自覚により、拡声機放送は必要な場合にのみ行い、その場合には騒音とならないよう適切な方法で行わなければならないと考えられる。

(…)

4. 公共目的の拡声機放送に関する留意事項について

前章において、規制の適用を除外すべきと考えられるものの例として、公共の目的で拡声機放送を行う場合を挙げたが、これらについても騒音問題が提起されている場合がある。何人も拡声機放送を行うことにより周辺の静穏を害することのないよう努めるべきであり、すべて拡声機放送を行う者及び拡声機放送を行わせる者には周辺の静穏を害さないよう努めるべき責務があることは既に述べたところであるが、これら公共目的で行う拡声機放送についてもその例外ではない。

また、これを所管する行政部局等においても、騒音の防止に関して必要な措置をとるように努めるべきであろう。

環境行政部局においては公共目的の拡声機放送を行う関係行政部局等に対して、拡声機の適正使用を進める等の騒音の防止対策について協力を求める必要があろう。

5. とにかく声を上げましょう

とにかく騒音被害を受けていることをアピールすることです。それに尽きます。役所や防災無線関係者に直接抗議するほか、パブリックコメントに意見する、議員にメールや手紙を書く、タウンミーティングに参加する、新聞に投書する、いくらでも方法はあります。

「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(環境省)

この報告書の内容を踏まえて、関係各位によって必要な措置が適切に講じられ、さらに国民全体に静かな環境を求める意識と習慣が広まることにより、日本の街が騒音の少ない快適なものになっていくことを望むものである。

良い自治体と悪い自治体

防災無線を運用している行政の見解にはひどいものが多いのですが、賞賛すべき自治体もあります。

「子どもを地域で見守る」(岐阜県恵那市)

(質問)私の叔母の住む土岐市駄知町は、子どもたちの下校の時間になると、広報マイクで「子どもたちの下校時間になりました。地域の皆さんお見守りをお願いします」というような放送をしているそうです。わが家もそうですが、共働きの家庭も多いと思います。地域の方に助けていただけると、とても心強いのですが。

(回答)防災行政無線は、非常時や災害時などをはじめ、市民の方々に緊急的な情報を発信するために整備されたシステムです。昨今の市民の生活形態や就労体制の多様化から、放送に対して騒音としての苦情などもあり、放送内容は緊急性を優先するものとしていますので、ご理解願います。

「防災無線を活用して、防犯情報なども伝えてほしい」(東京都武蔵野市)

災害以外の情報を流した場合、市民の皆様に混乱を引き起こすおそれがあることなどから、防災行政無線により、防犯放送を行う考えはありません。

対して、とりわけ目に余る自治体の回答のサンプルです。

「防災行政無線がうるさいので止めてほしい」(埼玉県蓮田市)

お子様が寝ていたり、仕事の関係で休んでいたり、病気で療養中だったりと、様々な理由があると思いますが、防災行政無線はいざという時に必要なものであり、地域の皆様の要望で設置したものでもあるため、ご迷惑をおかけしておりますが、ご理解ご協力をお願いいたします。

なお、正午、午後5時のチャイムは防災行政無線の点検を兼ねたものです。異常を発見した時は、お知らせください。

おそらく苦情が多数来るのでしょう、予防線を張っているつもりかもしれませんが、子供が寝ている、夜勤等で休んでいる、病気療養中、すべて本来なら加害者は緊急性のないスピーカー放送を即刻止めるべき状況ですし、あまつさえ、騒音に苦しんでいる人に「異常を発見した時は、お知らせください」とは何事でしょう。蓮田市のこの回答はほとんど人でなしではないでしょうか。異常なのは防災無線スピーカーの運用です。

率直なところ、そもそも、街全体にスピーカーで大音量の音声を轟かせ、何万人から何十万人という人々に音楽や言葉を一斉に聞かせようというのは、とても乱暴な発想であり行為ではないかと思います。防災無線に関する調査を参照しますと、どの地域でも騒音に困っているという方が1割か2割は必ずいます。そうした人々は少数派であり、防災無線放送は大方の住民に受け入れられていると結論付けられることが多いのですが、裏を返すと、自治体ごとに絶対数で数千人から数万人もの騒音被害者が確実に生み出されていることになります。また、スピーカーから離れた場所に住んでいる人や、日中は職場などにいて普段自宅で放送を聞かない人を除外すれば、実質的に騒音と感じている人の割合は何倍にも増えるでしょう。1割2割ではなく、実は放送を聞いている人のうち3割4割の人が苦痛を感じているのだということになれば、解釈がまったく変わってくるのではないでしょうか。そもそも、たとえたった1割やそれ以下だったとしても、住民の生活のためにある行政が、自ら住民を騒音で苦しめるということがあって良いとは思えません。一方では、個々の家庭からの道路騒音や工場騒音、営業騒音などの苦情に粛々と対処している環境行政職員がいるのに(公害等調整委員会の機関誌などを読めばその努力を知ることができます)、同じ行政職員が正反対のことをしているのです。おかしいと思いませんか。現に各自治体で公害条例が制定され、音環境を保全する努力がなされているように、騒音問題というのは住民の生命・生存に関わる本来とても重要な問題であり、防災無線スピーカーの音声も例外ではないはずなのです。

さらに、外を歩いて意識して探してみれば、住宅密集地や、マンションのベランダのすぐ目の前などに立っている屋外放送塔が見つかることと思います。よく聞こえないという人がいる一方で、スピーカー近辺に住んでいる人々にとっては、防災無線の放送は、自宅の玄関先からメガホンでがなり立てられるようなものです。

たまに、中立の立場のつもりでしょうか、「行政が両者の間で板挟みになっている」と言う人もいますが、それはまったくの間違いです。平時に優先して保護されるべきは当然騒音被害に遭っている側の住民であり、このような設備を使用するには、よほどの理由や緊急性が必要だということは明らかです。防災無線の運用方法は、すべてここをスタート地点として考えるべきでしょう。そして、本当に必要なときにこそ音量を上げて堂々と使用すればいいのです。例えば、台風や津波など、災害がやってくるときに警報を呼びかけるのは正当です。それこそが防災無線が存在する意味なのですから。

他方で、定刻の音楽、防犯放送、地域の催し等のお知らせ、これらはすべて論外です。これらの放送は、誰かの家に向かってメガホンでがなり立てなければならないほどのものですか? 防災無線を通してではなく、自分の手でメガホンを持って同じことができますか? 中に住んでいる人は、起きているかもしれないし、寝ているかもしれない。病人がいるかもしれないし、乳幼児がいるかもしれない。本を読みふけっているかもしれないし、好きな音楽を聞いているかもしれないし、仕事に集中しているかもしれない。考えてみてください。昨今の大規模災害等により「安全・安心」を求める声が大きくなり、とにかく防災無線の整備をという動きがあり、整備したものは使わなければ損だという誤った発想があり、行政、とりわけ危機管理関連部局の内にも外にも制止する人間がいないのかもしれませんが、明らかな行き過ぎが起きているように思います。根底にあるのは、音環境に対する意識の低さと、防災無線とは一体どんな道具なのかという正確な認識および想像力の欠如です。

日本騒音制御工学会の学会誌の記事より、権威ある見解を一つ紹介します。1991年に結論が出ていました。

「災害情報と騒音―音の伝達にかかわる今日的問題―」(廣井脩・東京大学)

6. 平常時の運用

(…)そしてこのことは、防災無線を騒音とみなす人々にとっても有効な措置になる。緊急事態の際に必要な情報が防災無線から放送されても、怒りを感じる人はおそらくだれもいないだろう。そうではなくて、我々は、広報誌をみればそこに書いてあるような、巡回医療や納税の申告期限のお知らせといった類の情報が、静穏な生活の場に暴力的に侵入してくることに抵抗を覚えるのである。我々が騒音と感じるのは、それが不必要な情報だからなのだ。

大災害は、一部の地域を除いて数十年に一度くるかこないかの頻度に過ぎないが、そのときのために必要な防災無線が日常的な騒音源になっているとしたら、それはひとえにその運用に原因がある。住民の生命と財産の安全に寄与する情報を伝えるのが防災無線本来の役割であり、自治体職員としては、不要不急の情報をみだりに流さないという姿勢が必要である。まして、住民の生活様式が多様化しかつ不規則化している地域では、とくに住民の迷惑を考え定時放送の廃止をふくめた運用上の再点検が要求される。

すでに一部の市区町村では、防災無線を定時放送に使わず緊急時だけに利用を限定する傾向が出てきているが、防災無線が災害時に真に有効な機能を果たすためにも、また日常的な騒音源としての批判を克服するためにも、こうした運用の配慮が必要な時期にきているのではないだろうか。

ちなみに、著者はすでに亡くなられています。この記事が書かれて数十年、いまだ状況が改善されないどころか、スピーカーの濫用に拍車がかかっているのは、残念としか言いようがありません。 

WHO/Europe - Noise(世界保健機関ヨーロッパ)

"Noise is an underestimated threat that can cause a number of short- and long-term health problems, such as for example sleep disturbance, cardiovascular effects, poorer work and school performance, hearing impairment, etc."
「騒音は、睡眠障害、心臓血管系への影響、労働・学習のパフォーマンス低下、聴覚障害その他の多数の短期的長期的な健康問題を引き起こす過小評価されている脅威である」

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