店舗の宣伝や駅のアナウンスがうるさい場合には

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公共空間のスピーカー騒音に対して実際にあちこち意見をした経験から、どうすれば効果があるか(またはありそうか)をまとめてみました。筆者同様に「街がうるさいのでは」と思っている方々の参考になれば、また、声を挙げるハードルを下げられればと思っています。

店舗の宣伝スピーカー

飲食店、ドラッグストア、携帯ショップ等、路上で音楽や宣伝を流したり、マイクを使って呼び込みをする店舗が近年急増しています。これについては、うるさいと思ったら、まず従業員に一言声をかけるのが一番です。

8割ほどのケースで、その場で音量を下げてくれます。そもそも、特に深く意識することもなくボリュームを上げすぎてしまっていることが多いので、言えばすぐ小さくしてくれることが意外に多いです。

難点は、音量過剰という意見が、従業員の間でなかなか共有されないことです。何度か繰り返し声をかけたり(経験的には、2~3回意見すれば音量の抑制が持続することが多いです)、電話やメール・問い合わせフォームで「従業員の方にも直接お伝えしたのですが」とあわせて意見すると効果が大きいです。

ちなみに、屋外の商業宣伝放送は、実は自治体の公害関連条例によって音量や使用時間、使用場所等が規制されています。この点を指摘するとよいかもしれません。ただし、この規制の一般的な認知度は極めて低い(ほとんどゼロパーセントに近い)ので、知らないのはおかしいというような態度は取らないほうがいいのではないかと思います。

拡声器による商業宣伝は、以下のような名前の条例で規制されています。役所に尋ねれば、お住まいの自治体の条例を教えてもらえます。屋外の商業宣伝であれば、純粋なスピーカーだけではなく、ラジカセやテレビ、街頭ビジョン等、音を出すすべての機器に適用されます。

なお、チェーン店の多くでは、問い合わせフォームのみではあまり効果がありません。本社から店舗に連絡は行くものの、現場にスルーされるケースが多いようです(担当者がすぐ現地に赴いて、確認と再発防止を含めた処置をしていただけたこともありますが、レアケースです)。立場の弱いアルバイトの方などに意見するのは気が引けるかもしれませんが、スピーカーのボリュームを最終的に操作しているのは現場の方ですので、まず現場の方に問題を伝えたほうが良いようです。

こうした直接・間接の申し立てをしても対処してもらえず、なおやめさせたい場合には、役所の公害担当部局(環境○○課というような名前のことが多いです)に相談して、事業者に対し条例の説明や注意・勧告をしてもらうことになります。

余談ですが、公害関連条例には大抵「拡声機を使用するときは、使用時間は1回10分以内とし、1回につき15分以上の休止時間をおくこと」(東京都)というような規定がありますので、よく見かける、テーマソングや宣伝音声を屋外で常時流しっぱなしにしているものは、実はすべて法令違反です。他にも商業地域では75デシベル前後の音量制限や、午後7時以降は使用禁止(東京都)といった規定があります。

駅のアナウンス

これについては難しいところです。駅構内の放送については特に規制などはない上に、そもそも無数の利用客がいる鉄道事業者には日々大量の声が届いており、意見をしても、そのうちのひとつとして処理されるからです。多くの場合定型的な対応しかされません。また、駅員の方々と話しても、駅がうるさいことを認識はしていても、音量を下げた後で事故などが起これば責任問題になるのではないかと恐れる方が多いようです。

ただ、まったく耳を貸してもらえないわけでもありません。例えばJR東日本に対し、明らかに音量が大きすぎると思える放送についてご意見・ご要望の受付から意見したところ、以下のような回答をいただき、実際に音量が下がりました。こういうこともありますので、とにかく意見してみるのがいいのではと思います。

いつもJR東日本ならびにJR東日本ホームページをご利用いただきましてありがとうございます。 このたびのご意見につきまして、以下のとおり回答させていただきます。

頂戴したご意見を参考にさせていただき、若干ではありますが、音量を下げさせていただきました。(…)

また、路線名を忘れたのですが、アナウンスが煩わしいとたくさんの意見が届いていたところ、短く簡潔な言い回しに改めたというニュースを見たことがあります。多くの人が、一度きりではなく、たとえば年に一回、半年に一回など継続的に意見するようにすれば、それが積み重なって改善されやすくなるかもしれません。

ちなみに、大音量の音は騒音性難聴その他の多数の健康被害を引き起こすという医学的なエビデンスがあり、実際に労働安全衛生規則では、85デシベルを超える職場では防音具の装着が義務付けられています。首都圏の駅スピーカーの音量は85デシベルをオーバーしていることが多いので、それについて触れてみるのもよいかもしれません。騒音計がAmazonなどで手軽に購入できるほか、公的な数値としては使えませんが、スマートフォンに簡易的に音量を計測できるアプリがあります。

一技術者としては、今の日本の駅のアナウンスや発車メロディーは鳴らし方があまりに杜撰で、うるさいと感じている人だけではなく、アナウンスを聞きたい人や、高齢者・難聴者にとっても、また事故防止の観点からも良い放送になっていないと考えているのですが、それについてはまた別のページで論じたいと思っています。

ひとつだけ興味深い話を先に紹介しますと、WHO・世界保健機関が、「80dB(A)以上の騒音が援助的な行動を減少させることや、大きな騒音が攻撃的な性格の人の攻撃的行動を増加させることについて、かなり整合性のある研究結果が得られている」(環境騒音のガイドライン)と報告しています。近年、駅における暴力行為が増えているという報道がありますが、駅アナウンスがうるさくなっていることも原因の一つではないでしょうか?

灯油その他の移動販売車、廃品回収車など

これらについては直接の苦情はまったく無意味です。人々が寝起きし生活を営む住宅街で大音量のスピーカーを鳴らすような事業者は、最初から苦情が来ることや迷惑を承知の上でやっているからです。

住居地域での商業宣伝については、前述の公害関連条例によって55~65デシベル前後の音量制限があります。これはほぼ人の会話の大きさです。住宅街で周囲に反響するような宣伝音声を鳴らしている場合、違反していることは明らかですので、役所の環境担当部局に相談したり、110番通報をすることをおすすめします。

詳しくはこちらのページを参照してください。

商業宣伝は「騒音公害」として扱われます

ここまで「公害」という言葉を繰り返し使用しています。重要なことなのですが、商業宣伝放送は、行政も以下のように、取り締まらなければならない騒音公害として認知しています。困ったときや、自分で直接意見しづらい場合には、役所に相談するのが良いかと思います。

騒音公害行政の対処方法-市区町村騒音担当職員へのメッセージ-(総務省)

商店街での固定スピーカーによる商業宣伝放送や灯油の移動販売車・廃品回収車などの自動車による宣伝放送、さらには、最近では都市部で増えてきたLED画面の宣伝放送など、拡声機騒音に係わる苦情が増えています。

(…)拡声器騒音の規制は、各自治体の適正な公害関係条例の執行に必要なものであることから、(…)

商業宣伝のしおり~拡声機を使用される皆様へ~(神戸市環境局)

近年、繁華街での商業宣伝放送や、住宅地での移動販売車等による拡声機騒音を原因とする苦情が数多く発生し、深刻な問題になっています。

事業者は地域構成員の一員であり、住民との関係を保ちながら事業活動を行えるよう、地域の良好な生活環境の確保に十分配慮する必要があります。

また、事業者や、店舗で勤務する方々にも、今これを読んで問題となっていることを知ったからには、「公害」を引き起こさないよう配慮・自重していただければ幸いです。

とにかく声を上げましょう

とにかくまず難しいことは抜きにして、うるさいものはうるさいと表明して構わないのではないでしょうか。公共空間で大音量のスピーカー音声を無理やり聞かされる側にはその権利があると思います(余談ですが、「囚われの聴衆」という言葉があります。検索してみると面白いかもしれません)。ですが、いわゆるクレーマーになってしまうのではと躊躇する方も多いでしょう。筆者もそうでした。

「クレーム」というとネガティブなイメージがありますが、本来のclaimという英単語は「正当性を主張をする」というニュアンスです。また、「クレーマー」は実は日本でしか通じない和製英語です。東芝クレーマー事件をきっかけに「クレーマー」という言葉が広まって、企業などに対して苦情を言うのは基本的におかしな人であるという風潮になったと記憶していますが、その結果、比較的真っ当な考えや感覚を持っている人々までもが萎縮して何も言わなくなってしまったという面もあるのではないでしょうか。もし自分に正当と思える不満があるのなら、堂々と主張して恥じるところは何もないのではないかと思います。とりわけ、相手が明確に法令違反の行為を行っているのであればなおさらです。

YouTubeのさおだけ屋の動画に、海外の方々が面白いコメントを書いていました。

IN YOUR FACE in Japan!

“These loudspeaker vehicles seem totally incongruous with the Japanese custom of not wanting to inconvenience or trouble other people. (…) I imagine most Japanese actually find these vehicles to be irritating, but they are too polite to complain.”
「こうした拡声機の車は、他の人々に迷惑をかけたがらない日本の慣習と完全に矛盾しているように思える。(…)ほとんどの日本人は実際にはこういう車に苛ついているんだけど、礼儀正しすぎて苦情を訴えられないんだと想像するよ」(ロシア)

“I kind of wonder how this goes down in Japan, where I think the ‘Japanese’ way is usually to be very considerate to others, like no cellphones on buses and trains. Is this something they just accept?”
「どうしてこれが日本で認められているのかやや不思議だ。知る限り、『日本的な』振る舞いは通常とても他者への思いやりがあって、例えばバスや電車で携帯電話を使ったりしない。これは彼らが本当に納得していることなのか?」(カナダ)

“Wah I was there : I discovered that Japan may be a very noisy country That was unexpected”
「以前住んでいた。日本はどうやらとても騒音の多い国だということを発見したよ。予想外だった」(フランス)

「礼儀正しすぎて苦情を訴えられない」というのは重要な指摘で、「日本の消費者は商品やサービスに不満があっても何も言わず、ただ去っていくので恐ろしい」という話を聞いたことがある方もいるかと思います。ゆえに、この国においては、世間の空気を読んだり、察したりということが行われており、それで上手くいっていることも多いのですが、スピーカー放送についてはこれが機能しません。特に駅や駅前の繁華街などについては、通勤・通学や移動のために、利用しないという選択肢がありません。そうすると、不満を持っていても実際にブレーキをかける人はおらず、新しいスピーカー音声が次々と増えていく一方になります。スピーカーという機械は休むことを知りませんから、一度設置されると、撤去されない限り音が積み上がり続けます。そうして収拾がつかなくなったのが今の日本の街の姿ではないでしょうか。

2016年3月に、「嫌いな都内の駅前1位『渋谷』」というニュースがありました。理由のトップは「騒音がうるさい」だそうです。人々が集まる文化の中心地、人気の街だと思っていたら嫌いな駅前1位だとは、と驚いた人も少なくないようなのですが、あれほど多数の街頭ビジョン等から会話も困難になるような大音響が流れていては無理もないのではないかと思います(そもそも、一緒に街に出かけている友人や同僚、恋人等とのおしゃべりを広告音声で妨害されて喜ぶ人などまずいないと思うのですが、いかがでしょう?)。このアンケート結果が現に示しているように、首都圏の街がうるさいと思っている人は潜在的に多数いるようです。が、スピーカーの使用者の多くは、思っていて察してくれる相手ではないのです。そもそも周辺環境のことを考え、配慮ができるようであれば、最初からスピーカーの音声を安易に公共の場に流したり、音量を無闇に上げたりなどしません。現に、最近は携帯電話をマナーモードで使っている方がほとんどのはずです。個々人のレベルでは公共の場に大きな音を流すのは迷惑行為だと分かっているはずなのに、どういうわけか商売となると途端にたがが外れてしまうのです。また、商店街のBGMについては、管理者の方にお会いしたところ、高齢で耳が遠くなっていたケースもありました。街に大音量のスピーカー放送が流れているとき、それは地域住民の合意のもとで行われていることだと錯覚しがちがなのですが、実のところは、ごく少数のスピーカー使用者が、独断で、何千人、何万人という人々に迷惑をかけているという構造です。

ブログやSNSなどで「うるさいなあ」などとぼやいていても届きません。公共空間のスピーカー騒音については、考え方を180度変えて、問題のスピーカーの使用者にはっきりと音を止めたり小さくするよう意見するべき、さらには、現行の法令に違反していたり、地域の価値を損なっているケースも多々あるのですから、行政や地方議員などを巻き込んででも積極的に止めるべきではないでしょうか。個人や地域で自警団的な活動を始めてもよいと思います。おそらく、当事者に対して直接声を挙げる人や、行動する人がほんの少し増えるだけで、日本の街がいくらか落ちつきを取り戻し、静かな街に住みたいという希望が叶うようになるのではないかと思うのです。

「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(環境省)

拡声機放送は便利な情報伝達手段であるが、聞きたくない者の耳に入る場合や使い方が不適切な場合等には相当の騒音問題が生じる。単純な比較は困難であるにせよ、諸外国と比べて日本の街は拡声機による騒音が著しいともいわれている。

この報告書の内容を踏まえて、関係各位によって必要な措置が適切に講じられ、さらに国民全体に静かな環境を求める意識と習慣が広まることにより、日本の街が騒音の少ない快適なものになっていくことを望むものである。

関連資料・リンク