灯油の巡回販売を利用しないでください

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住宅街にスピーカー騒音をまき散らす灯油の移動販売に抗議・反対するページです。よくある論点と、騒音被害者がどう行動すればいいかについて説明します。

1990年代頃から、この国では、毎年冬になると住宅街に灯油の移動販売車が現れ、スピーカーで大きな音量で宣伝音楽を流すようになりました。こうした業者の利用をやめてください。家族や近隣、同じ町内の方々にもやめるよう伝えてください。また、業者は販売方法を見直してください。

なぜ?

スピーカーの宣伝音は迷惑です。

住宅街ではたくさんの人々がそれぞれの生活を送っています。想像してください。

デスクワークをしている人、勉強中の学生、病気で寝込んでいる人、夜勤明けで熟睡している人、映画を鑑賞している人、テレビを見ている人、本を読みふけっている人、寝ている乳幼児、乳幼児を寝かしつける母親、楽器を弾いている人、ネット中継をしている人、等々……

住宅街で拡声機を使って音楽や宣伝を鳴らすと、多くの人の活動が妨げられます。

実際に、スピーカー騒音について行政への相談が増えているそうです。声に出すのをためらって我慢している人は何十倍、何百倍もいるでしょう。

騒音公害です。

商業スピーカーの使用は、各都道府県の公害関連条例で規制されています。住宅街では、音量制限が55デシベルや60デシベルといった数値になっています。これは人の会話の音量です。

灯油の移動販売車は、音声が周辺一帯に反響するような大音量を鳴らしていることがほとんどですが、すべて規制違反です。そうした業者を利用することは、ある意味、法令違反の行為の片棒をかつぐことになります。

実のところ、人々が寝起き生活する住宅街で大音量のスピーカーを鳴らすような乱暴な商売がまかり通っている国はほぼ日本だけです。もうそろそろおしまいにしませんか。

よくある疑問とその回答

Q. 灯油の巡回販売は安くて便利なのですが……

便利さを享受している人の陰で、スピーカーの騒音に怒っている人々が大勢いるのです。「灯油 騒音」などでウェブ検索して、どんな有様になっているか確かめてください。あなたが迷惑な騒音業者から灯油を買っていることに、すぐ隣に住んでいる人は眉をひそめているかもしれませんよ。

ちなみに、経済活動を行う上で、自分たちだけが利益を得て、第三者には負担や損害を押しつけることを外部不経済といいます。典型的な公害の構造です。

Q. 大きな音でなければやってきたのが分かりません

そもそも、そのような販売方法には最初から無理があるのです。音量が大きくなるほど、騒音に苦しむ人が増えることを考えてください。

特に、高齢者は耳が遠いから大きな音を出さないと聞こえないのだと言う人もいますが、それでは音量が際限なく大きくなっていってしまいます(現にそうなってますよね?)。一体どこで歯止めをかけるのでしょうか。

Q. 巡回販売がないとお年寄りが困るのではないですか?

いくらお年寄りのためと言っても、そのために他の人々を苦しめることは許されません。すべての人の生活が同様に保護されるべきです。

行政への相談からひとつ紹介します。

灯油販売車両による騒音(名張市)

(ご意見)灯油販売車輌が、大きな音楽を鳴らしながら家の前を通ります。その音がうるさくて夜勤の為昼間寝ている者としては、この車が来た後は寝付くことができません。いくら言っても音は小さくなることはありません。

この車を待っているお年寄り、車に乗れない方等のことを考えたとしても許容範囲を超えた騒音だと感じます。

(回答)(…)現地調査や音量を確認し、基準値を超えるようでしたら、必要に応じて指導を行ないたいと考えています。

また、お年寄りといっても様々で、住宅街には自宅療養中の方なども大勢いらっしゃるはずです。寝たきりの高齢者がいる家のそばでスピーカーで大音量を鳴らすのは許される行為でしょうか? 実際、多くの自治体の条例で、病院や老人ホームの近くでは音量に関係なくスピーカー使用禁止になっています。守られているようにはまったく見えませんが……。

いずれにしても、お年寄りを持ち出したところで、住宅街でスピーカーで大きな音を鳴らす行為を正当化することはできません。寝かしつけた乳児を起こされて困っているという人もいます。

灯油販売車の騒音

(…)大音響で鳴らし、子供(1歳)がおびえるので困っています。時間はだいたい21時前後で、ひどいと22時前後です。『赤ちゃんがおびえるので他の場所に移動してもらえないか』と直接きいてみましたが、『お客さんがいらっしゃるので・・・』と言われました。

Q. 巡回販売が駄目ならどうやって灯油を買えばいいのですか?

巡回販売が広まる1990年代より前は、ガソリンスタンドで買う以外には、灯油は電話で注文して配達してもらうのが一般的でした。以前のやり方に戻すか、地域に迷惑のかからない他の買い方を考えてください。それでいくらか高くついたり、手間がかかることになったとしても、それは灯油の利用者が支払うべきコストです。

地域によりますが、「灯油 宅配」や「灯油 配達」でウェブ検索すると、注文配達を行っている業者が見つかるかもしれません。

また、こたつやエアコン等、他の暖房機器を検討してください。住居やお住まいの地域の気候にもよりますので一概には言えませんが、とにかく法令違反の行為を行なっている業者を利用するのはやめてください。

ちなみにエアコンですが、最近のものは一昔前と比較してずっと省エネで電気代が安くなっています(一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターのウェブページより引用)。また、寒冷地用のエアコンも各社から出てきています。

勘違いをしないで欲しいのですが、灯油を買うな、使うなと言っているのではありません。大音量のスピーカー宣伝をしている違反業者からは灯油を買わないでください、ということです。もし代わりの方法がどうしても見つからないようでしたら、巡回販売業者にスピーカーを鳴らさずに灯油を売りに来るよう提案してください。実際に地域によってはそうしている業者もあります。

Q. 灯油の巡回販売の音楽に親しみを感じているのですが……

たとえあなたが好きな音楽でも、他の人にとっては騒音でしかないということがあるのです。また、その音楽は商業宣伝です。特定の企業が、自らの営利目的で流しているものです。誰にでも嫌いなテレビCMのひとつくらいはあるでしょう。テレビなら、電源を切るかチャンネルを変えれば済みます。が、屋外からスピーカーで大音量の音楽を浴びせられては逃げる場所がありません。

また、そもそも住宅街でこのような商業活動が行われることが不快という人がいるのです。都市計画法で、地域によって住居、商業、工業などおおまかな使用用途が決められています。繁華街や商店街などであれば経済活動の一環として一定のスピーカー宣伝は許容されるかもしれませんが、そういったものを住宅街にまで持ち込むのはやめてください。

「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(環境省)

(1) 拡声機放送を行う者の責務

拡声機放送に係る騒音に関する対策の考え方としては、まず第一に、何人も拡声機放送を行うことにより周辺の静穏を害することのないよう努めるべきであり、すべて拡声機放送を行う者及び拡声機放送を行わせる者には静穏を害さないよう努めるべき責務があるとの考え方を前提とする必要がある。

拡声機放送を行うことにより発生する害は、聞く側にとっては拒みようがなく、放送を行う者の一存により音環境が支配される。したがって、規制されるか否かにかかわらず、拡声機放送を行う側の自覚により、拡声機放送は必要な場合にのみ行い、その場合には騒音とならないよう適切な方法で行わなければならないと考えられる。

Q. 耳栓でもすればどうですか?

耳栓には30から35デシベル程度の遮音性能しかありません。一般に、灯油の巡回販売車のスピーカー音は100デシベルやそれをさらに超える音量ですので効果はありません。試してみれば分かりますが、スピーカーの宣伝音声だけが聞こえるようになります。逆効果です。

Q. 灯油の巡回販売は季節の風物詩です

誤解です。灯油の巡回販売が増えたのは1990年代からで、比較的最近の出来事です(各社の沿革を調べると分かります)。快く思っていない人も非常に多く、定着した文化とはとても言えません。

また、大手の灯油販売会社は、数百台というような数のタンクローリーを所有しています。販売員も地域社会とはまったく無関係な短期アルバイト等です。こうした大量の車両と人員を動員して、ローラー作戦のように住宅街をスピーカーの機械音声で覆い尽くすことが、果たして風物詩などと呼べるのでしょうか? 法令や、社会の迷惑を意に介さない一部の企業の営利活動にすぎません。

灯油の巡回販売 うるさすぎる

そもそも根源的な話なのですが、住宅街には乳幼児や、夜勤の人、病気で臥せっている人なども大勢います。そのただ中をスピーカーで大音量を流して練り歩くなど、まともな人間、まともな企業のすることではありません。誰も自分自身ではそのようなことは絶対にやらないでしょうに、他人がやっているとなると、なぜか「季節の風物詩」などと言って見過ごしたり、あまつさえ利用したりする人が少なくないのは不思議なことです。たとえ法規制があることを知らなくても、やってはならない、認めてはならない商売の仕方だと分かるでしょうに。もしそう思わない人がいたら、寝ている赤ん坊のそばで大声で叫んでみて欲しいものです。

第一、考えてみて欲しいのですが、住宅街の狭い路地に危険物を満載したタンクローリーが堂々と入ってくるというのはとてもおかしなことではないでしょうか。木造家屋の密集地で火災でも起こそうものなら、どうなるか見当もつきません。車体で道を塞がれ、消火活動も難しいでしょう。事実、知る限りでも巡回販売のタンクローリーから灯油が流出する事故が何度か報道されています。

もう一度、ゆっくりと、確認させてください。静かな住宅街に、危険物満載のタンクローリーが、スピーカーで大音量の機械音声を鳴らしながら進入してくることが「風物詩」ですか? おかしくないですか? 日本の伝統的な移動販売と比べても、まったく異質なものだとは思いませんか?

Q. 移動販売のスピーカーはどのように規制されているのですか?

ほぼすべての自治体で公害防止のための条例が制定されており、その中に商業拡声機の規制があります。詳しくはお住まいの地域の条例を調べてください。例を挙げますと、このような条例があります。

住居地域では大体55デシベルや60デシベルといった厳しい規制値になっていますので、住宅街で周囲に反響するような宣伝音声を鳴らすとその瞬間にアウトです。

平成25年版 「環境・循環型社会・生物多様性白書」 第4章(PDF)

平成23年度末現在、(…)拡声機騒音は41の都道府県及び116の指定都市、中核市、特例市及び特別区で条例により規制されています。

なお、「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」といったそれらしい名前の条例も各自治体にありややこしいのですが、これは主に政治宣伝などを取り締まるためのもので、商業宣伝とは無関係ですので注意してください。

昨今、企業のコンプライアンス(法令遵守)が叫ばれていますが、その一方で、法令に違反する、それどころか明らかに多くの人々に損害を与える営業車両が堂々と住宅街を徘徊しているというのはとても不思議なことです。

また、直接は関係ありませんが、憲法論議において、環境権(良好な環境の中で生活を営む権利)、静穏権(静穏な生活環境を享受する権利)といったものが提唱されているようです。

Q. 苦情を言えば音量を下げてくれるのではないですか?

すでにいくつか事例を紹介しましたが、多くの業者は苦情を聞きません。これを書いている本人も、これまで3社の灯油の巡回販売に都合10回以上直接苦情を言いました。その結果はというと、

  • 2週間で元の音量に戻った
  • 2ヶ月で元の音量に戻った
  • 翌年に元の音量に戻った
  • 「あーあー、お年寄りがいるからねー」などと流し、結局音量を下げない
  • スピーカーの音量(デジタル表示)を「24」から「22」にして、下げただろう、と言い張る
  • チラシの裏を出して、とにかく住所と名前をここに書けの一点張り(不審ですし、嫌がらせをされる事例を聞いていたので拒否しました)。結局音量を下げない
  • 路上で口論になり、「覚悟しとけよ」と捨て台詞を言われる。音量をさらに上げて町内を一周
  • 無言でハンドルを切って車体をこちらに寄せながら発進

と、解決するどころか、身の危険を覚えるような有様です。販売店にも何度も電話しましたが、「こっちも商売だしな」とまったく聞き入れません。結局、一住民の手には負えないということで、役所の環境課に相談して、各業者に条例の説明と厳重指導をしていただき解決しました。ネット上で調べても、何度言ってもやめない、逆に家の前で音量を上げて嫌がらせをしてくるといった体験談ばかり見つかります。

また、販売員の経験者によると、週に1度は「うるさい!」と怒鳴られたり、抗議を受けるそうです。それだけ不快や苦痛を表明する人がいるにも関わらず(腹を立てつつ我慢している人はさらに大勢いるでしょう)、変わらず住宅街に大音量をばらまき続けているわけです。苦情があればやめればいいと思っている、というレベルですらありません。これではほとんど暴走族と一緒ではないでしょうか。

とある掲示板の販売員の書き込みです。

2010/11/18(木) 02:48:01.38 0

白い目で見られるんで精神的にキツイですが、廃品回収ほどではないです。
(…)
あとは、ここに書きこんでいる方々のご指摘通り騒音の問題です。
関係ない人から「うるせー」「じゃまくせー」等の罵声はしょっちゅう浴びせられます。
でもそれにへこたれているようじゃ売れないんです。

大きい音を出すのは遠くの人に聞いてもらって準備させるんです。
それによって買い漏れもなく売り上げアップでいいことばかり何ですが、
ときどき関係ない人とケンカになります。
音が小さいとお客さんの準備が遅れて、買いそびれるんです。
たださすがに給油中は音絞ってました。
給油中も爆音の人いますがあれはよくないと思います。
後は競合相手との絡みですね!
曜日とエリアで決めているんですが、うっかり道1本間違えて競合相手の縄張りに突入してしまうと、
お客さんから情報が漏れて、報復として自分の縄張りもあらされたり、ばったり会っちゃた日にはお互い車から降りてきて、
「今日は俺の日だから出てけ」「いや俺の日だ」等とお互いの主張をぶつけ合う時もあります。
動物と一緒で縄張りを守ることがかなり重要です。

住宅街に騒音をまき散らしておいて、そこで暮らしている人に「関係ない人」も何もあるか! とか、住宅街を縄張り争いの舞台にするな! と言いたくなるのですが、とにかく、灯油の巡回販売とはこのような商売のようです。客として利用したり、風物詩だなどと言って眺めているだけでは分からないことだと思います。

さらに、警察を呼ばれたりしないのか、という質問に対して、

怒られたらそこに行かなくするようにするだけです。
警察も通報されたからには無視はできないからしょうがなくって感じだと思いますよ。
それで、だいたい通報した人はどこの家の人か分からないんですよね!
面と向かって文句言えないその辺の小心者の仕業と解釈します。
それに苦情が来るのはだいたい売れないエリアなんで、コースから省く口実になるんで、ダメージは多くないです。
あと条例やら許可証なんかは気にしてやる商売じゃないです
なんかトラブルあったらその場、その場で対処するスタイルです。

話が通じるような相手かどうか、雰囲気がつかめるのではないかと思います。

灯油の巡回販売を利用する方々は、自分がこのような人たちと取引をし、お金を渡しているのだということを理解しているのでしょうか。多数の苦情の訴えがあり、それがないがしろにされていることを知っているのでしょうか。住宅街を堂々と巡回しているから、多くの人が納得していることなのだと思っていませんか?

Q. なぜそのように問題のある商売がまかり通っているのですか?

もともと日本は、焼き芋屋、チャルメラ、さおだけ屋など、(どちらかというと素朴な)移動販売の音に比較的寛容なところがありました。そこにスピーカーや再生機器の発達があり、また組織化された業者群が現れ、快く思わない人々も止める暇がないうちにみるみる規模を拡大していったのでしょう。社会的な承認を得ていない商売の仕方であることは間違いありません。

都心に感じる治安悪化 なぜ違法行為が取り締まられないのか(朝日新聞社)

しかし電気拡声機による暴騒音は50年前に比べて大きく増え、問題を決定的に悪化させている。石焼き芋屋の売り声はもはや本人の生の肉声ではなく、あらかじめ機械で録音したアナウンスの声が大音量でスピーカーから流れるようになった。

また、音を大きくするのはスピーカーのボリュームをちょっと指先でひねるだけなのに対して、それを逆方向に回させるには、直接抗議するにせよ、行政や警察の助けを借りるにせよ、遥かに大きな苦労をしなければなりません。家族や近所の目が気になる人も多いでしょう。音を出すほうが圧倒的に強いのです。さらには、現に騒音被害を訴えている人に対して、手助けをするどころか、そんなことではこの国では暮らしていけない、心の持ちようの問題だ、などと二次被害を加えるようなアドバイスをする人たちがいます。結果、泣き寝入りをしてしまう人がほとんどなのではないでしょうか。

質問に対してとても乱暴に答えてしまうと、「暴走族がなかなか捕まらないのと同じ」です。「巡回販売の利用客は期待族のようなものだ」と怒っている方もいました。

加えて、灯油の移動販売については、お年寄りのお客さんがいるのだ、灯油を届けて感謝されているのだ、と言う人がいます。業者自身しばしばこれを言い訳や宣伝に用います。それを聞くと、苦情を言ったり、うるさいと考えること自体に罪悪感を覚えて黙ってしまう人が多いのではないでしょうか。

ですが、これは上でも説明したようにまったく弁解になっていません。灯油を届けたいのなら灯油だけ運べばいいのであって、スピーカー騒音をおまけにつける必要などありません。なにより、業者が灯油の巡回販売をしているのも、大音量で宣伝を流しているのも、まず彼ら自身の商売のためです。

いずれにせよ、こうした種々の理由により抑止・抑制がまったく働かず、既存の法令すらも無視されているのが現状です。

Q. 静かな場所に引っ越せばどうですか?

生活基盤は簡単に移せるものではありません。誰にでも、通勤、通学、買い物、近所付き合いといった事情があるはずです。それも一家全員にです。戸建てを構え、地域生活を営んでいるところに移動販売車がやってくるようになったというようなケースであればなおさらです。賃貸だとしても、転居は何十万円というお金がかかりますし、手続きも大変です。

加えて、実際に物件巡りをして、スピーカー業者が来ない場所を簡単に調べられるかどうか、居住地にどれくらい制約を受けるか確かめてみてください。ちなみにマンションの高層階なら大丈夫なのではないかと思いきや、逆に音を遮るものがなく、抗議に行くこともできないというトラップがあるそうです。

一言で答えますと、さらっと無茶を言わないでください。第一、なぜ不当な騒音被害に遭っている人が引っ越さなければならないのでしょう。それに、受験勉強をしている学生や、泣いている赤ん坊や、病床にある人などに対しても「引っ越せ」と言えますか?

それから、たまに「無人島に引っ越せ」というようなことを言う人がいるのですが、これはただの暴言ですので真面目に回答する価値を認めません。

Q. 巡回販売をする人たちも生活がかかっています。文句を言うのは可哀想ではないですか?

まず、生活のためであれ何であれ、商売はルールを守ってするものです。社会秩序を乱すような行き過ぎた商行為を抑え、フェアな経済活動が行われるようにするために法令があります。

灯油の巡回販売が増えたのは1990年代頃からです。それより前は、灯油はガソリンスタンドで購入するか、電話で配達してもらうのが普通でした。しかしそこに、住宅街に直接タンクローリーを乗り入れ、大音量の宣伝音楽を鳴らすという乱暴な販売方法を採る業者が現れ、客をごっそりさらってしまいました。以前の業者の生活はどうなったのでしょうか?

実は、騒音公害の問題があることをきちんと認識し、スピーカーを使った巡回販売をしていないことをウェブサイトでアピールしている善良な灯油宅配業者もあるのです。が、失礼ながら、あまり儲かっているとは思えません。ルールを守る経営者が成功せず、まして退場していくというのであれば、世の中が荒んでいくばかりではないでしょうか。

さらに申し上げますと、騒音に苦情を申し立てている人たちは、まさに自分の生活が守られないために抗議しているのです。自宅という生活・生存の最後の砦、最もプライベートであるべき空間に、よりによって拡声機の大音響を叩き込んでくる人たちがいます。それに対して抗議の声を上げるほど苦しんでいる人たちがいます。加害者と被害者を取り違えるようなことはしないでください。

Q. 行政の対応や認識はどうなっていますか?

基本的には能動的に取り締まるようなことはなく、住民の相談を受けて指導をするというスタンスのようです(2016年時点において)。パトロールなどをして取り締まることも現実的には難しいでしょう。つまり、もしあなたが騒音被害に苦しんでいるなら、そのことを行政にアピールしなければなりません。

拡声器による騒音について(大阪府堺市)

(市民の声)毎年冬になると、遠方からでも聞こえる大きな音を鳴らし、灯油売りの業者がやってきます。日曜の静かな朝の空気を劈き、場合によっては夜8時を過ぎても音を鳴らしている様は、どう考えても非常識と言わざるを得ません。(…)

(市の考え方)(…)ご質問の趣旨については、府条例に基づき環境指導課が、当該事業者に対して指導します。

静かなまちづくりについて(東京都中野区)

大音量を流しながら来る灯油販売車を規制してほしいとのご要望について、音量規制については、東京都の「都民に健康と安全を確保する環境に関する条例(通称:環境確保条例)」により、スピーカーの使用時間、音量などについて規制が設けられており、その規制に違反しているとすれば、区において当該事業者に対して注意・指導さらには勧告を行うことで改善を求めることになります(…)なお、区役所の休務日、平日でも早朝(午前8時30分まで)や夜間(午後5時過ぎ)であまりにもひどい状況でスピーカーを使用している場合については、所轄の警察署へ連絡をしていただければ、警察署の方で注意することもあります。

また、総務省公害等調整委員会の機関紙(2012年8月号)に、以下のような記事が掲載されています。

騒音公害行政の対処方法-市区町村騒音担当職員へのメッセージ-(PDF)

商店街での固定スピーカーによる商業宣伝放送や灯油の移動販売車・廃品回収車などの自動車による宣伝放送、さらには、最近では都市部で増えてきたLED画面の宣伝放送など、拡声機騒音に係わる苦情が増えています。

これらの拡声機騒音に対する規制は、多くの都道府県公害条例によって行われていますが、最近は、移動販売車による拡声機騒音の苦情対応に苦慮していると自治体職員から聞くことが多くなりました。(…)

この様な自動車による拡声器騒音の規制は、各自治体の適正な公害関係条例の執行に必要なものであることから、(…)

苦情が増加していること、環境行政において取り締まらなければならない騒音公害のひとつとして認知されていることは間違いないようです。灯油の巡回販売がはっきりと名指しされています。

また、旧環境庁の「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(PDF)という報告書があります。平成元年と古いものですが、全編を通してとても思慮深い内容になっており、必読です。

Q. 他の国にはこのようなスピーカーを使った移動販売はないというのは本当ですか?

事実です。メキシコなど例外はありますが、ほとんどの国において、住宅街で拡声機を使用するなど考えられないことです。YouTubeのさおだけ屋の動画に対する海外の方々のコメントを紹介します。

IN YOUR FACE in Japan!

“What the hell. Isn’t that illegal!”
「なんてこった。これ違法じゃないのかよ!」(スウェーデン)

“They want people in trains extremely quiet, but they can shout out loud like this in public? o_O”
「彼らは電車の中では人々に極端な静寂を求めるのに、公共の場でこんな風に大きな音を出してもいいの?」(インド)

“In the US that guy would get shot! Remember: don’t mess with the graveyard shift.”
「アメリカならこいつは撃たれるだろう。覚えておけ、深夜勤務の人を煩わせるな」(アメリカ)

“These loudspeaker vehicles seem totally incongruous with the Japanese custom of not wanting to inconvenience or trouble other people. (…) I imagine most Japanese actually find these vehicles to be irritating, but they are too polite to complain.”
「こうした拡声機の車は、他の人々に迷惑をかけたがらない日本の慣習と完全に矛盾しているように思える。(…)ほとんどの日本人は実際にはこういう車に苛ついているんだけど、礼儀正しすぎて苦情を訴えられないんだと想像するよ」(ロシア)

“I kind of wonder how this goes down in Japan, where I think the ‘Japanese’ way is usually to be very considerate to others, like no cellphones on buses and trains. Is this something they just accept?”
「どうしてこれが日本で認められているのかやや不思議だ。知る限り、『日本的な』振る舞いは通常とても他者への思いやりがあって、例えばバスや電車で携帯電話を使ったりしない。これは彼らが本当に納得していることなのか?」(カナダ)

“Wah I was there : I discovered that Japan may be a very noisy country That was unexpected”
「以前住んでいた。日本はどうやらとても騒音の多い国だということを発見したよ。予想外だった」(フランス)

“We used to have those in my country but they stopped doing it somewhere during my teen years”
「自分の国にもこういうのがあったけれど、ティーンエイジの頃のいつかになくなったよ」(マレーシア)

もうひとつの証拠として、上の質問で紹介した旧環境庁の報告書の参考資料「諸外国における拡声機放送に係る騒音に関する規制の状況」から一部抜粋します。なお、ここでの拡声機放送とは、移動販売だけではなくすべての商業宣伝放送です。

ワシントン 強制手段に訴えることなく、法令は遵守されている。
ニューヨーク 法制定当初(1972)には、商店、レコード店、映画館等からの反発が強かったが、現在は本制度が十分定着している(拡声機を使用している場面は見られない)。
ロサンゼルス (…)市条例に違反して使用すれば逮捕は可能。罰則が厳しいので、通常警告のみで取締まることが可能。
モントリオール 拡声機の使用はほとんどない。
ロンドン 拡声機に関する苦情はほとんどない。
パリ 1965年内務大臣通牒で、「広場等で行われる宣伝放送は特に問題、ライバル意識から音量を高め、けんかに至ることもある・・・」
拡声機の使用例は極めて少ない。特に車両に拡声機を設置して使用する例は皆無である。
ミュンヘン 車両に搭載した拡声機による政治宣伝や商業宣伝はほとんどない。
ボン 年間200~300件、許可されている。
許可対象:商店の広告(新改築の一日のみ、慣例)
使用場所の近辺においてのみ聴取可能な音量
音楽は使用禁止
警察又は秩序行政担当官庁の指示に従う
ウィーン 公共空間で使用する場合、市町村長の許可を要す。
市町村が個別に審査 使用条件を定めて許可
シンガポール 拡声機による宣伝等はほとんど見られない。

特にボンやウィーンの項目を見ると驚くのではないでしょうか。公共空間でのスピーカーの使用が許可制なのです。それほどスピーカーを使用することが重く考えられているということです。テレビなどに映る諸外国の落ちついた街の風景は、こうした規制の上に成り立っています。欧米先進国のみならず、中国などでも屋外の宣伝スピーカーを一切禁止しようという動きがあるそうです。

最後に、この報告書の締めの文章をぜひ読んでいただきたいと思います。

「商業宣伝等の拡声機放送に係る騒音の規制等対策について」(PDF)

拡声機放送は便利な情報伝達手段であるが、聞きたくない者の耳に入る場合や使い方が不適切な場合等には相当の騒音問題が生じる。単純な比較は困難であるにせよ、諸外国と比べて日本の街は拡声機による騒音が著しいともいわれている。

この報告書の内容を踏まえて、関係各位によって必要な措置が適切に講じられ、さらに国民全体に静かな環境を求める意識と習慣が広まることにより、日本の街が騒音の少ない快適なものになっていくことを望むものである。


騒音に困っている方へ

直接苦情を言うのは効果がありませんし、危険なのでやめたほうがいいです。役所に環境・公害担当の部署がありますので、そこに相談するのが一番かと思います。日時や業者名、車両ナンバー、被害状況などの記録を取っておくといいでしょう。

近隣や町内の方に直接、または自治会などを通して利用しないようお願いすることも考えられます。「拡声器使用による営業行為は禁止です」というような警告の看板を立てているところもあります。

極端な例だと思いますが、巡回販売車のあとをついていって、利用客に一人一人説明と説得をしてまわったという方もいるようです。

警察への相談については、これを書いている本人はしたことがないのですが、#9110(警察総合相談電話番号)に問い合わせた結果、110番通報して構わないという回答をいただいた方がいます。また、こちらに実際に通報した方がいます。

行政も、警察も、住民からの相談がなければ動けません。我慢して待っていても事態が良くなることは絶対にありませんので、表立って反対の声を上げることが重要だと思います。

それから、私がそうだったのですが、春まで耐えれば騒音業者はいなくなる、しばらくの辛抱だ、とついつい考えてしまいがちです。それでは何年経っても動けません。冬に入る前から、巡回販売がやってきたら今年はすぐ行動するのだという心の準備をしておきましょう。また、これを読んでいる今、すでにシーズン半ばになっていたとしても即座に動きましょう。

また、「季節の風物詩」といった無邪気な声に代表されるのですが、灯油の巡回販売の利用客には、そもそも、騒音に苦痛を被っている人がいることを認識していない人も数多くいるようです。人々が寝起きしそれぞれの生活を営む住宅街でスピーカーで大音量の宣伝を流せば、腹を立てる人や、被害を受ける人が大勢出てくるのは当たり前のことで、想像力がないのではと言いたくもなるのですが、そこは抑えて地道に訴えていくほかありません。

少なくとも、ほとんどの自治体において、現行の法令に明らかに違反しているのです。困っている方は、遠慮する理由は何もないので、我慢をせず声を上げて、この大規模な騒音公害をやめさせましょう。

一つの町に一人、行動に出る人が現れれば、この騒音公害はなくせます。

筆者について(なぜこのようなページを作ったのか)

拡声機騒音にほとほと迷惑しています。というより、長らく実害を被ってきました。

私は、自宅勤務のプログラマです(でした)。最近は主にスマートフォンのアプリを開発しているのですが、もう少し具体的に説明しますと、毎日朝から晩まで、コンピュータに複雑な作業をさせるための手順を考え、組み立てるといったことをやって生計を立てています。そうした仕事をしていると、移動販売の騒音というのは本当に鬼門なのです。何度、いや何百回、難しい問題に取り組み、解法に何時間も頭を悩ませているときに、窓の外から突然飛び込んでくる宣伝スピーカーの大音響に台なしにされたかわかりません。高価な耳栓、工事現場で装着するようなイヤーマフ、ノイズキャンセリングヘッドホン、二重サッシ、レーンが重みでひん曲がるような分厚い防音カーテン、また逆に音楽や環境音、ホワイトノイズを流すなど、およそ考えられる限りの対策を試しましたが、大音量のスピーカーが相手ではどれも何の役にも立ちません。

とりわけ、廃品回収車と灯油の巡回販売には耐えかねて何十回も苦情を言いました。このような抗議行動をしたのは初めてのことです。が、前述のように、素直に聞き入れる販売員は一人もおらず、身の危険さえ覚える有り様でした。

灯油の巡回販売がやってくるようになって最初に5年間我慢し、さらに5年間無駄な直接抗議を繰り返した末、これは最早手に負えない、どうやら話の通じる相手ではないとようやく悟って、役所の環境課に相談して各業者に条例の説明と厳重注意をしていただきました。2000年から2010年頃にかけての出来事です。そうして、住んでいる町内にはふたたび平穏な冬が戻ってきたのですが、ひとつ隣の町に行くと、腹立たしいことに相変わらず同じ業者が爆音を鳴らして営業していますし、ネット上にも、騒音に怒っている人が依然多数見つかります。一方で、何の疑問も持たずに巡回販売で灯油を購入している人たちがいます。YouTubeなどにも灯油販売車が大音量で宣伝を鳴らしている映像が多数アップロードされていますが、それを一つ一つ調べていくと、あらゆる業者が全国的に違反行為を行なっているようで、もはや灯油の巡回販売という業態そのものに問題があるものと考えざるを得ません。「灯油巡回販売 騒音」などのウェブ検索の結果を見ていても、怒りの声が年々高まっているように感じられます。最近も、新しく業者と戦っている方のブログが目に留まりました。これはひとつの深刻な社会問題であろうということで、意見表明と、自分の体験から学んだこと、考えたことを共有するためにこの文章を執筆しました。

今なお騒音被害に苦しむ方々の状況把握や、理論武装のお役に立てば幸いです。印刷して資料として用いていただいても構いません。

参考までに、もし私がまた移動販売の騒音被害に遭ったら、これまでの経験から、間違いなく即日役所に駆け込むか110番通報します。私のように不必要に10年間も悩み苦しみ続け、こんなページを作るほどこじらせるようなことを他の被害者にも繰り返して欲しくはありません。躊躇していては人生を台無しにしかねません。ご一考ください。

文中でも説明しましたが、住宅街で大音量のスピーカーを鳴らすような乱暴な商売がまかり通っている国はほぼ日本だけです。問題の根源として、そもそも人々の範となる政治家たち自らが率先して選挙カーで住宅街に騒音をばらまいており、本当にどうしようもないのですが(選挙カーも他の国にはありません)、スピーカーが非常に無神経かつ無節操に使われており、また、それが見過ごされている国であることは間違いありません。日本の街の景観がひどいという話はよく耳にしますが、音環境もそこに含まれることはほとんど意識されていないように思います。こんなことはもうそろそろおしまいにしませんか。

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